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短編詳解第5回

三谷郁夫氏作(1999年12月号短編コンクール)今回紹介するのは、1999年の短編コンクールにおいてダントツの評点で優勝した三谷郁夫氏の7手詰(詰パラ 1999-12 短編コンクール)です。
本作のポイントはずばり「99竜の活用」にあります。
(当時の評価は、誤解答2・無解答15・A評価92・B評価13・C評価2の平均点2.84でした)。

図は△13玉まで7手詰なので駒を取る手は普通ありませんが、とりあえず初手▲22桂成を確認しておきたいと思います。
図は▲22桂成△13玉と進めたところです。ここで歩以外の前に利く駒があればよいのですが、生憎持駒は角角桂。角を打っても△24歩合、▲19竜と回っても△18歩合と受けられてしまうので、これは失敗です。

図は▲45角まで初手駒取りは詰まないことがわかりました。ということは、どうやら初手は角を打つしかないようです。とりあえず▲45角(図)と打ってみます。

図は△13玉までここで合駒の選別となるわけですが、これはすぐに歩か桂とわかります(他合は取って22桂成以下7手駒余りで詰む)。
歩は複雑ながら詰む(手順割愛)ので、どうせ取られる桂馬で△34桂左合とし、更に▲22桂成△13玉と進めたのが左図。
しかし、この変化も頭に利く駒がないために詰みません。第一、99の竜が全く働いていません。

幾つかの手段を追ってみましたが、作品のメカニズムはわかってきましたでしょうか。これらの紛れを踏まえても、作意に到達するにはなお容易ではありません。以下は解決編ですが、場合によっては詰将棋の新たな概念を知ることになるでしょう。

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短編詳解第4回

関口格氏作(詰パラ1988-01 小学校)短編詳解第4回は関口格氏作の7手詰です。初手はとりあえず銀を動かすしかなさそうですが、どこに動かしましょうか?

しかし、少し考えてみると、銀の移動場所は64以外ありえないことがわかります。何故なら64以外の移動場所―すなわち開き王手だと64歩合くらいで後続がないからです。対する応手は1通りしかないので必然的に46玉と決まります。

図は△46玉までさて、図では47と57への逃走が見えています。57玉には58竜があるのでこちらはあまり警戒する必要がないのですが、問題は47玉。この場合にも58竜という手段はありますが、しかしながらこちらは91の角道が通っていないと詰みません。これらを考えると、次の手は銀を63・53・75のどこかに動かすことになりそうです。

図は△55歩合まで試しに63銀成と指してみました。しかし、△55歩合と受けられると以下▲同角成△同玉に▲82角成と迫っても△44玉と脱出されてしまいます。これは▲75銀でも同様です。

図は△55歩合まで先程の失敗の原因は、71角が動いた時に44に逃げ道が出来たことにあります。そこで、工夫して53銀不成(図)としてみましょう。これならば、先述の△55歩合の変化は▲同角成△同玉に▲82角成()で詰むようになります。よって、後手は合駒を諦め、角道を塞いだことによって新たに生じた35の地点に逃げることになります。

図は△35玉までさて、初形より▲64銀生△46玉▲53銀生△35玉と進んだ図を再掲しています。ここまで来たら後は一遍に詰ませてしまいましょう。さらに銀を動かします。


図は▲43銀生まで【正解手順】▲64銀生△46玉▲53銀生△35玉▲44銀生△34玉▲43銀生まで7手詰(詰めあがり図)

銀をナラズで4回動かすという奇跡のような作品でした。短評にもあるように、3手目に53銀生とソッポに移動するのが作品の価値を高めています。

短編詳解第3回

詰パラ1998-9 原田清実氏作第3回です。当初、この作品(詰パラ1998-9 原田清実氏作)にしようと思ったのですが、駒数は増えるものの同手数で(同一の桂馬が)もう1回動く作品があったのを思い出したので変更することにしました。
「7手で3回も動かせることができるのか?」という方は、下図を見る前に自分で作図に挑戦してみると面白いかと思います。
※この作品も、桂移動の意味付けが明快で無駄のない好作です。作意手順は最後に。


詰パラ1990-12 小林敏樹氏作さて、そういうわけで、今回はこの作品を紹介します。発表場所が短編競作展となっているこの作品、当時のパラを持っていないので結果がわからないのですが、首位争いをしたのは間違いないでしょう。
既に桂の「連続移動」というテーマをばらしてしまったので解説の仕方に迷っているのですが、「解図」せずとも「鑑賞」するだけで楽しめる作品だと思うので、変化などを確認しながら作意を追ってみたいと思います。


図は▲49馬まで作意に入る前に紛れの確認を。試しに初手▲49馬(図)としてみましょう。△37合は▲同歩で無効なので、玉方は△36玉の一手。この局面をみると、25と45の2つの逃げ道があることがわかります。そして、詰方はこの両方に逃げられないように迫ることはできません。(▲16飛成のような手では△45玉)
「49に引いて▲37歩と空き王手して下さい」と云わんばかりの▲39香配置から、▲49馬は有力だと見当がつきますが、どうもその前に事前工作が必要のようです。


図は▲45角までということで、退路を塞ぐ▲45角(図)が正解となります。慣れてくるとすぐに思い浮かぶ手ではありますが、そうでない人にとっては鮮烈な一手かもしれません。
さて、ここでの応手は重要。どう応じても前述の▲49馬~▲37歩迄5手で詰んでしまうように見えますが…。


図は▲49馬まで本当は、4手目がわからなければ2手目△同桂は指せないのですが、解説の都合で、とりあえず△同桂と指したものとします左図は△同桂に対して▲49馬と引いたところ。
これに対し、△37合・△57打合は前述の通り▲37歩迄。また、初手▲49馬の紛れで詰まなかった△36玉は、45が塞がった効果で▲16飛成にて詰みとなります。
ではどう応じても5手詰なのか?というと、そうではありません。ここで驚愕の一手が飛び出します。


図は△57桂生まで塞がった穴を玉方自ら空けながら、▲49馬に利きを作る△57桂生(図)という応手がありました。調子にのってこれを▲同竜と取ると、36に逃げられて今度こそ詰まなくなってしまいます。
この57に跳んだ桂馬、一見、49に利くようになったものの動けないように見えます。ところが、なんと▲37歩と空き王手した瞬間に飛車の利きが止まって動けるようになるのです。


図は△49桂成まで図は△49桂成と、桂が3回跳んだところ。
もし「▲39香-▲38歩」の2枚が▲37歩とするためだけの配置なら、形が重い印象を受けてしまうところですが、本当の狙いはもう一回空き王手をすることでした。だからこそ、▲39香配置が必要だったのです。


図は▲36歩までということで、作意は▲45角△同桂▲49馬△57桂生▲37歩△49桂成▲36歩(図)まで7手詰でした。

4手目の△57桂打合を防ぐために桂4枚配置が絶対で駒数がどうしても増えてしまう上に、無機質な手順になりがちなとても難しいテーマだと思うのですが、玉方桂の3段跳びと、それに対応するような攻方歩の連続突きが印象に残る傑作でした。貧乏図式なのも、飛び道具の存在が際立つようでよいと思います。

原田氏作の解答…▲66角△57桂生▲43飛△38玉▲49飛成△同桂成▲65角まで7手詰
2手目は△57桂打合も考えられますが、これでは最終手▲65角で桂馬が余ってしまいます。つまり、この作品の桂跳ねの意味は「取られる駒をあらかじめ逃げておくこと」なのです。小林氏作と比較してみると面白いですね。なお、初手の▲66角は飛車の横利きを止める限定打。(例えば初手▲75角だと、最終手▲65角に△56合で不詰。

桂馬という駒はおもしろいですね。ではまた次回。



短編詳解第2回

YYZ氏作(詰パラ2001-11 小学校)「受賞していない作品」という厳しい条件を自分で設けてしまったために作品選びが難航していましたが、ようやくよい作品を見つけました。
今回紹介するのは、2.76という評価を得ながら惜しくも半期賞を逃したYYZ氏の7手詰です。

図は▲73角成まで考えられる初手の「数」はたくさんありますが、有力な「手段」は飛車を動かすか桂を動かすかの2つしかありません。とりあえず▲41飛成としてみましょう。(41以外の場所に動くと根元の51角を取られてしまいます)。これに対して△35玉は▲44竜△46玉▲73角成(図)と、うまいこと詰みます。しかし、△14玉と逃げられると、▲13桂成と迫っても△同玉で詰みません。
どうも、初手に飛車を動かすのはうまくいかないようです。

図は▲13桂成まで次に桂を動かしてみます。33に移動するのは角道が塞がるため、△15玉と逃げられて明らかに詰みません。なので、▲13桂成(図)としてみましょう。
応手は△35玉△同玉△33玉△15玉の4通り。はじめに、△35玉は初手▲41飛成の紛れで検討したのと同様に、▲44飛成△46玉▲73角成にて5手で詰みます。また、△同玉は▲14馬と飛び込んで、△同玉▲12飛成△同竜▲15香まで7手で詰みます。


図は△12竜まで3つ目の△33玉も、▲41飛成の1手詰です。しかし、最後の△15玉は、以下▲12飛成△16玉▲49馬△27合▲23成桂に△12竜(図)と根元の竜を取られて失敗します。


飛車を動かしても駄目、桂を動かしても駄目。万事休す…でしょうか?いや、残された手段が1つだけあるはずです。ヒントはこれまでに追ってきた紛れ順の中にあります。次から解決編です。

図は▲13桂不成まで竜を抜かれないようにする▲13桂不成という妙手がありました。これで、▲13桂成のときに詰まなかった△15玉は▲12飛成△16玉▲49馬△27合▲21桂成(7手駒余り)で詰むようになりました。

図は▲21竜まで一方(15玉)が詰むようになったとはいえ、そのために他方(33玉)が詰まなくなっては意味がないので、△33玉の変化を確認しておきましょう。なお、△同玉と△35玉の変化は桂の成/不成に関わらず同様の手順で詰みます。

生の桂馬は22に利きがないため、▲41飛成に△22玉と逃げられます。果たしてちゃんと詰むのかどうか、不安になりますが、よく見ると21に利きがあるではありませんか。整理すると、初手▲13桂不成に△33玉は、▲41飛成△22玉▲21竜△13玉▲23竜(7手駒余り)で詰みます。

初手に対して△35玉は5手。△15玉は7手駒余り。△33玉も7手駒余り。そして△同玉は7手駒余らずなので、作意は「▲13桂不成△同玉▲14馬△同玉▲12飛成△同竜▲15香まで7手詰」だとわかりました。

手広い初形に、意味付けを変化に隠した初手の桂不成。
誤解34人・無解4人というのも頷けます。配置が拡がってしまったのが残念ですが、この手順を支えるには仕方がないところで、2手目△35玉の変化の変化を割り切り、初手▲57馬の余詰を消している△56歩の配置などはうまいところです。

打歩詰の関係しない桂不成の中では飛びぬけた作品で、これ以上のものはそうできるものではないでしょう。傑作です。

短編詳解第1回

小林敏樹氏作(詰パラ1987-06 短編競作展)
この「短編紹介」は、惜しくも賞を逃した無名の受賞級短編を、できるだけ解りやすく紹介しようという企画です。初回ということでどの作品にしようか悩みましたが、短編競作展で、赤羽氏作の不詰によって繰上げ首位になった、小林氏の7手詰を紹介したいと思います。

図は▲53角まで左下に逃げられては詰みそうにない形なので、とりあえず53から角を打ってみます。考えられる応手は△66玉△64合△85玉△74玉の4通り。順番に調べてみましょう。

図は▲35角成までまず、△66玉は、▲33馬△57玉▲35角成(図)まで5手でぴったり詰みます。また、△64歩合は▲同角成△同玉▲65金以下7手駒余りで詰みます。

図は▲65角成まで残るは△74玉と△85玉ですが、△74玉は▲84金以下簡単。△85玉には▲86金△74玉に▲65角成がぴったりで、△63玉▲64角成以下11手で詰みます。

ここで何かがおかしいことに気がつきます。すなわち、7手詰なのに2手目△85玉と逃げられると、詰めるのに最短で11手を要するのです。
このような「詰みすぎる」状況では、それぞれの変化の応手を再確認することが問題解決の近道です。実は、ここまでの変化の「読み」に1箇所見落としがあるのです。

図は△44歩合まで早詰と即断した2手目△66玉の変化に、△44歩合という妙防がありました。▲同角成では75に逃げられてしまうので▲同馬の一手ですが、そこで△57玉と入られると、▲35馬△66玉▲44馬△57玉…と連続王手の千日手に陥ってつみません。

「詰みすぎ」が一転して「詰まない」状況になってしまいました。

ところで、この△44歩合とはどういう応手なのでしょうか。△44歩合を省くと53の馬が35にきて、5手で詰みました。しかし44歩合とすることで、33の馬が邪魔をして53の馬が動けなくなりました。つまり、△44歩合は2枚の角の利きを重複させる手なのです。これを解決するためには、初手に角の場所をよく考えなければなりません。

図は▲31角までいよいよ解決編です。2手目△66玉の変化で、33の香を取った馬は66に利いていましたが、そこでもう1枚の角を53~35のラインで動かそうとすると、前述のように44歩合を食らって失敗しました。よって、初手はこれを避ける▲31角!。これで△66玉の変化は▲33馬△57玉(合駒は無意味)▲13角成で詰むようになりました。△64歩・△74玉の変化は前述のように詰みますし、△85玉は、▲86金△74玉▲65馬△同玉▲75角成と逆に2手短く詰みます。(先程11手掛かったのは角が53にいて玉が52に行けたから)

図は△42歩合までこれにて解決…と云いたいところですが、最後に確認しておかなければならないのがこの△42歩合(△53歩合)です。これを▲同角成と取ると、△66玉と逃げられて詰まなくなってしまいます。
しかし、これには▲同馬が好手。2枚馬の威力は絶大で、どこに逃げても簡単に捕まることを確認して下さい。

こうして、ようやく作意が▲31角△85玉▲86金△74玉▲65馬△同玉▲75角成だと判りました。"「利きの重複を狙う合駒」を避ける遠角"という構想もさることながら、43馬・33香だけで成立している変化処理が素晴らしい傑作でした。ちなみに当時の評価はA77 B18 C2 誤解20 無解13の平均評点2.83でした。
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